さすがに、日本のメディアでも報道するようになったが、ウクライナ情勢が悪化の一途をたどっている。ウクライナ情勢に詳しいボランティアの方が、詳細な情報を送ってくれた。
またこの記事を見たほかの方からも写真の紹介があった。
以下長いが紹介したい。
■下の記事・分析と、直接的な関連はありませんが、
フランスのRIVA Pressの写真です。
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■すでに日本のマスコミでも報じられていますように、ウクライナの情勢が極めて危険な状況を迎えています。
現状では、どのような形であれ、このまま平穏に事態が沈静化するシナリオはあまり考えられず、すでにデモや騒乱のレベルではなくて、内戦の瀬戸際、もしくは始まりだと個人的には認識しています。
可能性は低いと思いますが、今後考えられる最悪の事態は、ロシア系・ロシア語系市民の保護を名目にロシアが軍事介入することで、この場合、東西間の本格的な戦争に発展する可能性が否定できなくなりますし、さらにその場合、中国を巻き込んで、ただでさえ不安定な状況にある東アジアに飛び火する可能性も高まります。(あるいは領土問題などをめぐってロシアが日本にも極めて強硬な態度を取らざるえなくなり、結果として耐性が低くなっている日本の世論をさらに刺激して緊迫が一気に高まる局面も考えられます。)
実際、同じような状況でロシアはグルジアと戦争を行い、親ロシア的だったアプハジアや南オセチアを「独立」させて、事実上のロシアの「保護領」化しています。(これもオリンピックの時でした…)ロシアの政権内部では、ウクライナの西部をウクライナから切り離してヨーロッパ側に渡す、あるいはクリミアや東部、南部などのロシア語系の地域を切り離してロシアの保護領化するなどのシナリオが検討されているといいます。ロシアは、連日西側の政治家たちがウクライナ入りするなどして内政干渉しているとして非難していますが、一方でロシアは大統領以下の政治家、官僚をロシアに呼んでロシアで会談を行っていますし、ロシアの密使がウクライナ入りして協議しています。あるいは両国の大統領は頻繁に電話会談しているようですが、それらの内容は殆ど明らかにされていません。また、ロシアのマスコミを使って様々な情報戦を仕掛けています。(ロシアの新聞はウクライナでは地元紙と並んで売られていますし、テレビ・ラジオも入ります。ネットは言うに及ばずです。当然言葉が共通ですから、ロシアで伝えられたことは、そのまま同時にウクライナにも流入します。)今のところ、状況はロシアのペースで進んでおり、欧米の対応は後手後手に回っているという印象が拭えません。
日本ではあまり知られていないのですが、ウクライナの西の旧ソ連の共和国であるモルドバには、ソ連崩壊時にモルドバの独立を認めず、ソ連(ロシア)側にとどまることを決めた「ドニエストル沿岸共和国」というのがあって、どの国も承認せず、殆どの地図にも載っていませんが、事実上の「独立国」となっている地域もあります。この地域は東と西の狭間にあって複雑で、非常に不安定な状態にあって、全体から見たら些細なことが、大規模な戦争の始まりとなりかねない不安定さを常にかかえています。
ともかくも、日本からは距離的には離れた出来事ですが、実は「隣の隣の国」で起きていることでもあって、日本の人々ももっと緊張感をもって、この事態を注視すべきだと思います。ウクライナだけでなく、ヨーロッパ全体にとっても恐らく第2次大戦後最大級の平和の危機が迫っている言って間違いないでしょう。
このような状況で最も困難な状況に置かれるのは、当然社会的弱者で、チェルノブイリの被災者も例外ではありません。
本格的な戦乱となった場合に、例えば、彼らに不可欠な薬はどうするのか、安否確認をどうするのか、どの段階で安全な地域に避難させるべきなのか…など考えることは山のようにあります。
ともかくも、どのような形であれ、可能な限りの最も平和的な形で事態が収拾できるよう願わずにはいられません。
現地報道から(リンク先は中継動画、写真、ビデオが中心のものですが、一部に遺体や重傷者の映像も含まれています。)
・ヤヌコヴィチ大統領国民向けテレビ演説。野党側の動きを非難。実力行使で抵抗を排除する考えを示す。20日は、犠牲者に対する服喪の日。http://podrobnosti.ua/podrobnosti/2014/02/19/959779.html
・首相代行、野党側の行動をクーデターの試みとして非難。http://japanese.ruvr.ru/2014_02_19/128908759/
・大統領と野党指導者との協議が行われ、「停戦」で合意するも、実現は不透明。
・現在までのところ死者は双方合わせて少なくとも26名で、それぞれ数百人の負傷者。http://podrobnosti.ua/podrobnosti/2014/02/19/959779.html
・取材中のウクライナの新聞記者も死亡。
・広場に面した「労働組合会館」全焼、中央郵便局などデモ隊により占拠される。http://www.unian.net/politics/886839-dom-profsoyuzov-vyigorel-dotla.html#ad-image-0
・キエフ市内の地下鉄は、安全確保を名目に、デモ隊の終結を防ぐため全面運休し、当局は、自家用車などでの移動も避けるよう市民に要請。
・キエフ市内に入る主要道路は警察により交通が制限されており、砂を積んだタンプカーによるバリケードを設置。一方、デモ隊も特殊部隊などの市内流入を防ぐためのバリケードを幹線道路に設置。
http://podrobnosti.ua/podrobnosti/2014/02/19/959783.html
http://korrespondent.net/ukraine/events/3308035-v-sety-poiavylos-vydeo-na-kotorom-hayshnyk-uhrozhaet-vodytelui-avtomatom
(銃でドライバーを威嚇する交通警察 写真・動画)
・鉄道は、キエフ発着列車の一部大幅な遅れ。
・キエフ近郊のボリスピリ国際空港は、今のところ発着便に変更はない模様。
・政府当局は、抵抗を続ける反政府勢力を「テロリスト」として、反テロ作戦により徹底的に取り締まる方針。野党側も政府の対応を「テロ」と呼び、非難。http://podrobnosti.ua/podrobnosti/2014/02/19/959990.html (保安局長官演説)
・政府は、国防軍を投入する方針。すでに部隊が向かっているとの情報。
・デモを組織する野党側も割れており、民族主義色の強い右派勢力・極右が徹底抗戦の方針。(このため国民の多くが、政権側の行動を支持しない一方、野党側の行動についても支持していない。先ごろの世論調査では、ヤヌコヴィチ大統領への支持率は2割程度で、大統領選第1回投票では首位に立てるが、2位との決選投票になった場合、いずれの有力野党候補との争いにも敗れるとの結果。地元を中心に一定の根強い支持があるが、全国レベルでは強い拒否感があることが明らかになっている。)
・収監中のティモシェンコ元首相、ヤヌコヴィチ大統領はハーグの国際戦犯法廷で訴追されるべきだと声明。野党勢力は政権と妥協しないよう求める。
・国内各地で地方行政府、警察、裁判所などへの襲撃、占拠相次ぐ。http://rus.newsru.ua/ukraine/19feb2014/ypravlenie.html
http://korrespondent.net/ukraine/politics/3307971-vydeo-shturma-protestuuischymy-volynskoi-oha
http://podrobnosti.ua/podrobnosti/2014/02/19/959946.html
http://podrobnosti.ua/podrobnosti/2014/02/19/959977.html
http://podrobnosti.ua/podrobnosti/2014/02/19/959984.html
・国内各地で与野党の本部、事務所への襲撃、放火相次ぐ。http://korrespondent.net/ukraine/politics/3308089-po-ofysam-partyi-prokatylas-volna-pohromov
http://podrobnosti.ua/podrobnosti/2014/02/19/960018.html
http://podrobnosti.ua/podrobnosti/2014/02/19/959985.html
・与党からの離党議員相次ぐ。
・米国務省、ウクライナ治安機関との電話回線が通じなくなったことを明らかに。米国、ウクライナ政府高官へのビザ発給停止などの制裁措置。このような制裁は何の意味もないとの批判も。
・ロシア政府、過激派勢力を支援しているとして、西側諸国の対応を非難。http://japanese.ruvr.ru/2014_02_20/128911291/
http://japanese.ruvr.ru/2014_02_19/128901648/
http://japanese.ruvr.ru/2014_02_19/128887619/
・東部地域の議会・行政府、キエフで起きていることはテロだとして、政権の対応を支持。秩序回復を求める。http://podrobnosti.ua/podrobnosti/2014/02/19/960008.html
・ウクライナのオリンピック代表団、死者への哀悼の意を示すため喪章をつけることを認めるよう求めるも、IOCは却下。http://podrobnosti.ua/podrobnosti/2014/02/19/960023.html
・キエフの医療機関で、衝突による負傷者への献血希望者相次ぐ http://podrobnosti.ua/podrobnosti/2014/02/19/959861.html
・日本のマスコミ、ウクライナ経済にデフォルトの危機と報じる http://podrobnosti.ua/podrobnosti/2014/02/19/960031.html
UNIAN通信
http://www.unian.net/politics/885568-krovavoe-protivostoyanie-na-maydane-nezalejnosti-video-i-tekstovaya-onlayn-translyatsiya.html#ad-image-0 (時系列写真・中継動画、ビデオ)
radiosvoboda.ua (RFE/RL Ukrainian) (中継動画)
http://www.radiosvoboda.org/
http://www.radiosvoboda.org/media/photogallery/25270037.html (18/19日 写真)
http://www.radiosvoboda.org/media/photogallery/25268314.html (18日写真)
Korrespondent (週刊誌)
http://korrespondent.net/ukraine/politics/3273412-maidan-onlain-kyev-vstrechaet-utro-kostramy-y-kanonadamy-pravyi-sektor-pryzyvaet-dodavlyvat
(時系列写真、中継動画、ビデオ)
TV 1+1
(NEWS TSN)
http://ru.tsn.ua/foto/centr-kieva-v-ogne-i-dymu-protestuyuschie-i-siloviki-soshlis-v-zhestkom-boyu-349655.html (写真)
TV Inter
(NEWS Podrobnosti)
http://podrobnosti.ua/podrobnosti/2014/02/19/959779.html (18/19日の動き 動画)
<蛇足>
ウクライナの昨年の大みそかの番組から
ウクライナで大人気の長寿お笑い番組です。
最初から最後まで政治・社会風刺で、政権側、野党側どちらも笑いの対象です。(ロシアやベラルーシ、欧米諸国も。)
これが、ウクライナの人々のごく一般的な見方を示していると思います。
ロシアの人気歌手やコメディアンもゲストで毎回何人も登場しますが、ロシアでは見られない発言が沢山あります。
かつてエリツィン時代のロシアにもこんな「自由」がありましたが、プーチン時代になって、「市民の声」によって、こうした政治風刺はどんどん消えてしまい、再び地下に潜ってしまいました…
観客の反応を見れば、本当に喜んでいるのが分かります。
翻って日本のテレビには、これほど沢山「お笑い番組」があっても、政治風刺、社会風刺が皆無に等しいのは何なのだろうか?とも思います。
あるいは、日本のゴールデンタイムにこうした番組を流して、人気を博すのだろうか、この会場の人たちのように大笑いできるのか、「外国人」が自分の国を風刺して日本人は笑うのか?など色々考えてしまいます。
http://www.youtube.com/watch?v=om5O5M-c9Tc
分かりやすい所から…
冒頭 大統領と治安部隊の風刺
27分5秒から、「プーチン大統領は、最近の動向に関わらずウクライナに対してロシアは友好的な対応を続けると表明しました…」猫のビデオ…
「でしょうねえ…」「とっても友好的ですね。」
29分過ぎ ロシアの人気司会者・コメディアン・歌手マクシム・ガールキン出演(有名な歌手のアーラ・プガチョワの夫)プーチンのまねで、ヤヌコヴィチ大統領との電話ネタ。
37分過ぎ 同じくソ連・ロシアの歴代指導者の真似で風刺、ロシア、ウクライナ、ベラルーシの大統領、有名政治家の真似で風刺
1時間54分過ぎ ソチオリンピックとウクライナの風刺
2時間2分過ぎ デモに参加する野党議員の風刺
2時間15分過ぎ 大統領とウクライナ内外の政治家の風刺 (2時間23分過ぎ「プーチン」右(東)側から登場、席を譲って座る、爆笑…)
2時間27分過ぎ ソ連時代の有名な子供向けの歌の替え歌で風刺 プガチョワと人気を二分したソ連時代からの人気歌手ソフィア・ロタルと共に出演者合唱 29分過ぎ、大統領の言葉を茶化して全員で笑う)
番外編
最近のウクライナの人気歌手オーリャ・ポリャコワのヒット曲から
http://www.youtube.com/watch?v=T1TKf2r2pWU
http://www.youtube.com/watch?v=BfjHhGLA1WE
http://www.youtube.com/watch?v=Xnnpi2VI89c
全編ソ連・ロシアや欧米の強烈なパロディーで出来ています。
ポリャコワは「際物」の歌手ではなくて、音楽の英才教育を受けて、チャイコフスキー音楽院まで出たプロの歌手で、2児の母です。
また、駐キューバ・ソ連大使を務めたエリート外交官の娘で、西ウクライナの出身ですが、とても正しい標準ロシア語を話しています。
きちんとした真面目な歌もレパートリーとして歌っています。
http://www.youtube.com/watch?v=CMiybiiWbf0 (ウクライナの孤児問題を啓発する歌)
ウクライナの「抵抗」はデモだけでなく、あらゆる面で全開状態で、恐らく、こうした直接的でない文化的な面での動きの方が、ロシアにとってはかなり目障りだろうと思います。
ロシアのものもウクライナにダイレクトに入りますが、ウクライナのものもロシアにダイレクトに入ってしまいますので。