いつも明快な論調でニュースを解説してくれるひらのさんから
メールが届いた。長文である。
一人で読むにはもったいないような内容なので
許可を得て、全文を転載する。
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今朝の産経新聞に目を通していたら、いつもは、「おいおい」と言いたく
なるような意見ばかりの「正論」欄が、大きな異変を示していました。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長の中谷巌氏による「30年
がかりで「脱原発」を目指せ」という主張が大きく出ています。
どうしてしまったのでしょう。(産経は、時々、不思議な記事を掲載します…)
見てみたら、Web版にも注目記事で出ていましたので、一応紹介しておきます。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110614/plc11061402570007-n1.htm
細部に関しては、異論も色々あろうかとは思いますが、一読すれば、
十分考えられた「脱原発論」です。
つまり、「復興の柱としてばかりでなく、近年の閉塞感を打破し、日本
再生の突破口にするためにこそ、国の威信をかけて「脱原発」をめざし、
世界をリードしろ。それくらいのことでもしないかぎり、日本の再生など
ありえない」というもので、菅首相の先日の再生エネルギー20%プランの
ようなものは中途半端すぎて駄目だという理由で批判しています。
さらに「「自然を慈しみ、畏れ、生きとし生けるものと謙虚に向き合う」
という日本人が古来持っていた素晴らしい自然観を世界に発信する
絶好の機会になる」という言葉で締めくくられています。
(ついでながら。紙面では無視されていましたが、Web版では、
デモの様子も写真と共に結構まともに伝えています。http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110611/dst11061121070042-n1.htm)
理想から言えば、直ちに全廃ですが、広く同意を得るうえでも、反・
脱原発派も、これくらいの妥協はあってよいと思います。(朝日新聞や
NHKが今日明らかにした世論調査の結果からも、今後原発は減らして
いくべきという意見が圧倒的ですから、30年かかりで無くすというのは、
具体的で広く国民が支持できるものだと思います。新規に建設しない
だけでよい。)
現実問題として、すでに原発が動いてしまっている以上、廃炉は数十年
がかりですし、廃棄物も相当量たまっているので、専門家や技術者の
層が急激に薄くなる事態は、却って危険性を増やしかねず、当面最低
限度は、やはり動かさざるを得ないでしょう。(これは、一度原発を国策
にしてしまった国として、残念ながら耐えなければならないリスクだと思
います。)ただ、その場合でも、もう原発が「経済的」というのはありえな
いし、むしろ、原発は「絶対に高コストでなければならない」という考えに
全体を転換させなければならないのは言うまでもありません。また、
それと関連して今回の事故で、特定地域に原発を集中させる事の危険性、
1箇所の原発で複数の原子炉を稼動させることの危険性が明白になった
のですから、同一地域に原発を集中させてはならないということと、1原発
に設置できる炉は2基か3基を限度として、実際に稼動出来るのはうち
1基のみにするという位はは徹底させなければならないでしょう。さらに、
「効率的な」大出力の原子炉というのもやめるべきです。国民的な支持を
確かなものにするためにも(すでに、国民の意識が脱原発の方向に向
かっていることがはっきりした以上、)反・脱原発派としても、単に危険性や
反対を唱えるだけでなく、一歩進んで出来るだけ具体的で現実的な提案を
訴えるべき時を迎えているような気がします。
とても大きな代償を払う事になってしまいましたが、国として「脱原発」を目指して
新しい国づくりを進めようというのは、安易で簡単な国旗掲揚・国歌斉唱などで
お茶を濁すよりも、今「はるかに国を1つにまとめる大きな力になるだろうと
思いますし、土地にしても食品にしても、大きなコストがかかってもきちんと
厳しい基準で徹底して汚染を管理するように国が動けば、長期的に見た場合
逆に日本のブランド力を高めることも間違いないでしょう。
(短期中期的には厳しいですが。)経済界の人々も、目先の利益ではなく、こう
いう展望があることに早く気づいて欲しいと切に願います。また、反・脱原発派
も、国の脱原発化、汚染管理の厳格化が、むしろ国力の向上に資するという
ことを積極的にアピールすべきだと感じます。
いまさらコスト競争などで他の新興国と争ったところで勝ち目などないのです
から、むしろ高コストを売りにして、国のイメージ、ブランド力を高めることに
賭けた方が、ずっと得策です。ドイツ、スイス、イタリアというような、むしろ
日本と同じような高ブランドのイメージで売っている国々こそが、脱原発に
動いている事は、故なきことではないということを、経済界も直視すべきです。
核兵器開発を目指すというような野心を抱えているならともかくも、もはや
日本のような国が原発をもっていることのデメリットの方がはるかに大きい。
原発があることで、中国製品よりも安い製品を沢山作れるというのなら、
それでも経済的意味はあるかもしれませんが、そうでないなら、もはや厄介者
以外の何者でもありません。質は良いけれど、高い、その上「原発事故が
起きた」、「今も原発が沢山ある」、「汚染管理は緩い」(つまり、ひょっとして
危ないかもしれない)というような国の製品など、買うのはやっぱり躊躇するし、
わざわざ出かけたくはないでしょう(よっぽどずば抜けて優れた特長が
あるか、安いかするならともかく)。何よりイメージがよくありません。
そういう国のものを持つこと、そういう国に行くことが、格好よくありません。
このまま原発依存の国づくりを進めるなら、中短期的には、そこそこの
利益はあがるかもしれませんが、長い目で見れば間違いなく、日本は世界
の中で、ただのどうでも良い国に堕ちていくだろうし、国民も、ますます格差が
大きくなってバラバラになっていくのが目に見えています。今の大人の世代には、ちょっと苦しいところも出てくるでしょうが、冷静に国の将来を考えた時、脱原発を明確化して環境立国を目指すという方向性は、世界の中で日本という国の歴史や文化、国民性を最大限に生かすことが出来るものであるし、賭けてみるだけの価値が十分にあるもののように思います。(少なくとも、IT革命やら金融革命などという上っ面ばかりのものより、ずっと日本人の特性にあっているし、地に足のついたものにできると確信します。そして、その分だけ、国民も自分たちのありように自信をもてるようにもなるでしょう。原発を1つ廃止することに、選挙の時みたいに花でもつけて、皆で万歳でもすればよい。)痛みを伴うけれども、国民にとっても我慢するだけの価値のある「改革」となるはずです。
チェルノブイリ25周年に際してウクライナの首相は、世界的な脱原発の動きに対して、「金持ちの国だけが出来る」と言いましたが、つまるところ、金持ちの日本にさえも出来なければ、その他の多くの国々にとっては、黙って危険と隣り合わせの日常を受け入れざるを得なくなってしまいます。逆に、試行錯誤の結果、日本という国が原発に頼らない国づくりというものを進めることが出来れば、日本という国の存在が世界の国にとっての希望ともなるし、その貴重なノウハウを生かして、あるいは低コスト化した新技術を使って、世界の脱原発化に貢献し、世界中の多くの市民が不安な日常から解放されることにもなります。欧米列強の植民地支配からアジア諸国民を解放するため進軍するなどというより、よほど世界の人々の解放につながるし、世界の中での日本の立場を強めることが出来るでしょう。(脱原発のための新しい「日独伊三国同盟」というのもありかも…)
震災の報を聞いて、世界の人々、とりわけ金銭的に裕福でない人々が沢山、日本のための募金活動に参加したというニュースが一頃、多く伝えられていましたが、それだけ日本の国民が期待されているということの裏返しでもあるでしょう。「一流を目指す。しかし、ともかく何であれそのために他者を傷つけることはしない、傷つけるものは扱わない」ということで、「平和主義」、「環境立国」という柱を据えて自信をもって国づくりを進めれば、日本という国は、世界の中で特別の位置にも立つことが出来るし、本当に個性的な国(自己実現した国)になることも出来るに違いありません。(そして、攻撃することが躊躇われるような国となることで、「防衛力」も高められる。)戦争の惨禍から平和主義を学び、震災の惨劇から脱原発による自然との調和のとれた環境立国を目指す事にした、というのはとても明快だし、生まれながらの「聖人」でなくて、人生同様に歴史に沢山の傷を抱えた生身の「国」として、自らを省み、時に赤面し、あえぎ苦しみながら(これをあっさり「自虐」と呼んでしまう、本当に自虐的な人々もいますが…とても軽薄で浅はかです。陰のないところに光は存在しえない。陰の部分を認められないというのは、それを抱え込む事が出来ないという自我の弱さの現れであるし、本当の意味で自身を大切にしていない、愛していないということです。そういう人がしばしば「愛国心」なるものを持ち出すのは、本当に馬鹿げています。いい加減にもっと強くなれ、と言いたい。ちょっと脱線。)それでも前へ歩む姿を日本という国は晒すことによってその価値を示すことができるし、それが出来る国だという事で、国民ももっと国に自信を持つことが出来る、そう確信しています。
総理大臣の退陣は避けがたいことでしょうが、せめて最後にやって欲しいのは、エリツィン辞任演説のような、国民が衝撃を覚えるような最後の演説です。彼は、「多くのことをすぐに成し遂げられると自分も含めて信じていたが、あまりにも問題が大きく、また力不足で、混乱を招き、国民の期待を裏切ってしまったことを率直に詫び(時に涙声を交えて)、そして次の世代に、この大仕事を委ねることにした」ということで首相ながら無名だったプーチンを後継に指名しました。もっとも、この後継者については賛否ありますが、国民がバラバラで当時崩壊の淵にあったロシアが、このことによって1つにまとまり、再び動き出したことは間違いない事実です。あの演説で、流れが全て変わってしまいました。日本の場合、後継を指名するようなことは出来ませんが、何があったのか、何を思ったのかを率直に語り(間違いなく、事故発生当時の状況は、国民の多くが思っている以上に過酷できわどいものだったはず。東京の廃都、東北・関東全住民の即避難というようなシナリオも頭を掠めていたに相違ないのです。その危機感は、後継者さらに国民全体に共有されなければならないものです)、力不足を詫びて、しかしそれでも、日本の将来のため、サバイバルのために痛みをともなうエネルギー政策の大転換を次のトップの下で進めることが必要だという事を全力で訴えることです。それが出来れば、いたずらに長く、結局大した実のなかった小泉時代よりかは、後世に大いに評価されることになるでしょう。バラ色ではなかたけれど、政権交代には確かに意味があったということにもなります。(ゴルバチョフもエリツィンも国民の評価は散々ですが、しかし、崩壊の淵、具体的には内戦の淵にあった国をつなぎとめ、次の世代に渡すことが出来た手腕は評価されるべきです。)
そして、願うところは、将来、日本国民の多くが、ネオンが宝石のように
きらめくニューヨーク、ロスの夜景ではなく、ほの暗く、月明かりが照らす
キエフの町の夜景こそが、都市の夜景として本物の美しさだということを
分かるようになってもらえたらなということです。
http://www.toride.com/~roshiashi/album83.23.html
(勝手ながら、行く度にキエフの夜は、確かに魔女が似合うと
思っています。キエフは妖怪が住んでいそうです。ペテルブルグは、
幽霊。モスクワは、生霊!)
元同僚の人がまとめたロシア、旧ソ連各地の写真アルバムより。
ロシア史の専門家だけあって、下手なガイドブックより、
はるかに読み応えがあります。
一応宣伝しておきます。http://www.toride.com/~roshiashi/album.html
脱線ついでに、ロシアで行くべきだったと後悔している町に
カシモフという町があります。そこの町の写真(ちょうど今の
季節のもの)を見てみてください。
まさしく「ロシア」という町です。
http://www.toride.com/~roshiashi/album58.19.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album58.25.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album58.27.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album58.28.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album58.29.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album58.30.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album58.32.html
おまけ 元職場と家の近所(生活の様子)
http://www.toride.com/~roshiashi/album110.23.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album110.24.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album111.4.html
http://www.toride.cm/~roshiashi/album111.9.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album111.10.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album111.10.htmlhttp://www.toride.com/~roshiashi/album111.16.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album111.17.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album111.18.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album111.19.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album111.20.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album111.21.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album111.22.html
http://www.toride.com/~roshiashi/album111.8.html
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