「親友・小津安二郎、先輩・溝口健二、鬼才・山中貞雄が
“天才”と呼んだ男」とチラシコピーに。
すでに先週の話になってしまった。
13日の日曜日に久しぶりに2本立てを見た。
★有りがたうさん(1936/松竹)
★風の中の子供(1937/松竹)
詳しくは新文芸座のHPをみてもらえばよいが、文句なく
おもしろかった。
名匠・清水宏 その感動の世界へ
原作は川端康成と坪田譲治。
「有りがたうさん」は若き上原謙が主役で乗り合いバスの
運転手さん。
バスに乗り合わせた人たち、あるいはバスにお金を払って乗れず
伊豆の山道を歩く人たちのそれぞれの人間模様を描いていた。
都会に働きに行く若い娘の話が主題で、働きといっても女中奉公
ではなく売られて行く娘と不憫に思い、駅まで送っていく母。
ところで私の母は結婚前、東京のお屋敷に女中奉公に出ていた。
そのとき一緒に働いていた同郷の友達とは今(いや、数年前まで)
もつきあいがある。
この映画の娘たちを思えば、女中奉公は恵まれていたことになる。
山道を歩いている一群の中に朝鮮人のグループがいた。
家財道具、布団などもかついで集団で歩いていた。
バスの運転手さんはだれにでも親切だ。
この一群の娘に父親の墓にときどき花を供えてやってほしいと
頼まれて承諾する。
娘は、「私たちは道路を作るとその道路を自分で歩くことはできず、
次の新しい場所へ行くのよ」と話す。
運転手は乗せてあげようとするが、みんなと一緒に歩く、
と言って断る。
旅芸人は後から歩いて来る自分の子どもに今晩は予定を変更
してお客がたくさんいる**温泉に行くから、と言伝を頼む。
また、娘たちが、駅についたら、新しいレコードを買ってきてと頼む。
みんなでお金を出し合って買っている。
楽しみはレコードぐらいしかないから、流行っているレコードにしてね、と。
それぞれ歩いている人たちにすれ違うたびに
ありがとうさん、と言って追い越していく。
上原謙さんはこの映画が初主演だそうだが、ほんとにすてきな人だった。
赤ん坊は増えているけど、農村の二男、三男には仕事がなく
娘を売らないと一家は食べていけない・・・
戦争前の不況の時代。
この映画の中で売られていく娘も結局は幸せな結末になるのだが
世相を反映した厳しい映画ながらほのぼのとしていて
ユーモアもあり素晴らしい映画だった。
当時の日本映画界では画期的であったという全編ロケーションでの撮影。
山道のロケなど大変な苦労だったと思う。
伊豆の風景だが、新潟の山奥の我がふるさと共似ていた。
日本の原風景ともいえるのかも知れない。
ゆったりした時間が流れていた。
「風の中の子供」は、児童文学の名作を原作にしているだけあって
子どもたちの描き方が心にしみた。
涙涙・・・
後年戦争孤児らを引き取って育てたという清水宏。
知らない監督だったが思いがけず、いい映画(監督)に出会えた。
明日まで特集を組んでいて、どれも見たい映画ばかりだったが
初日しか見られなかったのが残念。
再度の上映を期待したい。
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